おもてなし幻想 デジタル時代の顧客満足と収益の関係

タイトルがおもしろそうなので読みました。内容に説得力があり実践方法についての具体的な手順も示していて非常によい本だと思いました。カスタマーサービス業務に関わる方は一度読んでみるとよいと思います。

本書の主張は感動するようなカスタマーサービスは顧客ロイヤルティには影響せず、一方でひどいカスタマーサービスの経験は顧客ロイヤルティに悪影響を与えるというものです。具体的には何らかの問題がありカスタマーサービスを利用せざるを得ない状況になった顧客が問題を解決するまでの顧客努力を減らすことが重要であるという主張です。顧客努力というのは顧客が問題を解決するためにサポートページを検索したり、カスタマーサービスにメールや電話をすることを指します。そして顧客努力軽減に優れた企業の事例を紹介し、自社でも同じようにするための具体的な方法を示します。例えばサポートページの改善の仕方であったり、カスタマーサービス部門の教育方法や評価方法などを説明してます。

特徴的なのはそれぞれの主張を述べる前提として事前にアンケートを実施し、その分析結果に基づいて主張を述べ、具体的な事例を紹介している点です。そのため、非常に説得力がありました。また、どのように実践すればよいかについての説明も明確で具体的でした。例えばカスタマーサービスのやり方を変える場合であれば現場のメンバーに方針を決定してもらうことで動機づけを行ったり、まずは達成すべき目標を絞って段階的にレベルアップしていくというようなものです。

顧客努力を減らすというのは自分自身がユーザーである場合は全くその通りだなと思いました。今困っている状況をなるべく早く手間を掛けずに解消したいと思うことはあっても、期待を超えるようなサービスをしてもらって感動するみたいなことはあまりない気がします。とはいえ、例えばディズニーランドであれば期待するサービス内容みたいなイメージはあるので、要は期待値と乖離しないことが重要なのかなと考えています。明らかに期待を超えるサービスを提供されると想定している企業なりサービスにおいて普通の対応をされるとがっかりしてしまいそうな気がします。一方で、特に期待を持っていない場合は問題の解消をなるべくスムーズにできれば十分で、そこで感動するような対応をされても反応に困るというか、カスタマーサービスを売りにしてるのかな?ぐらいには思っても特にロイヤリティがあがる気はしません(何度か続けば期待値のイメージが変わってそれ以降は期待するようになる気がしますけども)。ですので、まずは期待値の設計が先にある気はしています。カスタマーサービスも当然コストが掛かるので、どこにリソースを割くかという話だと思いますので。後は、一般的なカスタマーサービス部門の業務内容や評価方法について知れたのもおもしろかったです。