ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学

ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学

ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学

日経ビジネスで広告を見かけて「ビジネススクールで学べる経営学は、最先端からかけ離れている!」という煽りがおもしろそうだったので読んでみました。ビジネス書でよく扱われるようなテーマについて、経営学の論文をエビデンスとしてより一歩踏み込んだ解説がされています。それぞれのテーマの結論が「よく言われているのは◯◯だけど実は△△というのが論文で示されています」みたいな感じになっていて、とてもおもしろく読めました。また、文章も特に難しい言葉を使ったりせず読みやすかったです。ビジネス書を読む人であれば読んでみるといいと思いました。

ビジネス書でよく扱われるようなテーマとしては以下のようなものがありました。詳しくは目次を参照してください。

  • ポーターの競争戦略(SCP戦略)とリソース・ベースト・ビュー(RBV)は比較するのではなく、そもそも適用範囲が異なる。具体的には三つの競争の型(IO、チェンバレンシュンペーター)に対応付けることができる。
  • 組織の情報の共有で重要なのは「組織の全員が同じことを覚えていること」ではなく「組織の誰が何を知っているかを、組織の全員が知っていること」である。
  • グローバル化とよく言われるが、大半の企業はホーム地域の売上が半分以上を占めており、本当の意味でグローバル企業と呼べるような企業はほとんど存在しない。
  • 世界はグローバル化もしていないし、フラット化もしていない。
  • ダイバーシティー経営というが、デモグラフィー型の人材多様性は組織のパフォーマンスに影響を及ぼさない。
  • 同族企業は海外でも多いし、業績も悪くない。

本書を読んで改めて手法というのはそれ単体で成り立たず文脈に依存するということを認識できてよかったです。例えるならとりあえず体調が悪くなったら風邪薬を飲むみたいなやり方もあるんでしょうけど、切り傷や打撲に風邪薬を使うのは筋が悪いみたいな感じでしょうか。病気の治療でも症状に合わせて処置を変えるように、ビジネス上の課題も万能な手法はなくて前提に応じて手法を使い分ける必要がありますし、複数の手法を組み合わせる必要があることに気づけました。普段やっているシステム開発だと例えば単体テストのメリット・デメリットや導入する前提みたいなのは分かるんですけど、いわゆるビジネスそのものは経験が少ないので、そんな当たり前のことを認識できていませんでした。そのため、ここ1年ぐらいで読んだビジネス書の中で一番良い本であったと思います。今後も筆者が主張する「思考の軸」を増やせるようビジネス書を読んでいければと考えています。